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第12話 片想いのプロまっしぐら

Autor: ゆちば
last update Data de publicação: 2026-09-01 20:00:53

 焼き菓子を食べ終え、恋バナも変な感じで終わった私とフェルナン陛下は、その後広場で大道芸を観賞。森林公園の池をボートで三周し、池に向かって石切勝負を十戦。

 そして公園を散歩していた一般の方々から声援を受けるという、「お忍びデート」ってなんだっけ状態のデートを楽しんだ。

「やった! また私の勝ちですね!」

「いいや、まだだ!  俺は絶対にあきらめない!」

「正義のヒーローみたく言われましても」

 私は大笑いしながら、勝負とは関係なく石を水面に向かって投げた。ピョンピョンピョン……と石は十回水面を跳ね、まるで今の私の心のようだと思った。

(楽しい。フェルナン陛下といると、すごく楽しくて幸せ)

 極貧時代、玩具ひとつなかった私が暇潰しにやっていた石切で、フェルナン陛下とこんなにも愉快に遊ぶことができるなんて。

 それだけじゃな

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     時は少し戻り――。 私の日傘はチンピラ三人組の脅しの材料として、無惨にへし折られていた。「痛い目みたくなかったら、大人しくついてきな!」 チンピラに破損させられた日傘代は経費で請求できるのだろうか。 そんなことを考えながら、私は彼らに付き従う形でひとけのない茂みに来ていた。もちろん、他の公園利用者の迷惑になってはいけないからだ。 黙って聞いていると、彼らには雇い主がおり、雇い主がどうしても私に復讐がしたいと言っているとのことだった。 と言われても私は陛下のために日々たくさんの不届き者を成敗しているため、いったい誰の指金かは検討がつかない。職業柄、恨まれることはたくさんしてきたのだ。(まぁ、誰でもかまわないけど) どうやらチンピラ三人組は、私の正体について雇い主から詳しく聞いていないらしい。 華奢で可憐な貴族令嬢の装いの私を見て、「ちょっと味見させてもらおうぜ」、「お楽しみの時間だ」、「可愛がってやるよ」と下衆な台詞を吐いているので、まさか誘拐した相手が国一番の聖騎士が女体化した(ことになっている)姿だとは思いも寄らないだろう。そう思うと、なんだか気の毒になってしまう。「でも、今、仕事中だから。パパッと終わらせて、視察に戻らせて」 同情するなら拳をあげよう。 私は、剣がなくとも十分強い。寧ろ、型にはまらぬ自己流格闘技の方が、自信があるくらいで――、そんなことを思いながら、私の拳がチンピラ三人組に向かって炸裂した。 そして、闇落ち時代が蘇るような荒々しさで敵を秒殺。「はーっ! 胸、ジャマ!!」 サラシがあれば、もっと動きやすいのに。そう思いながら、私が指をバキバキと鳴らしていると。

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    「ふんんんんんッ‼」 俺、フェルナン・フォン・イフリートは、森林公園のど真ん中で気合の雄叫びと共に握り締めた拳を強く胸に打ち付けた。 周囲の目? そんなものは気にしている場合ではない。(危なかった。正気を取り戻せたぞ) 胸の痛みで頭が冷静になり、俺はほっと息を吐き出す。 その理由は、うっかり従者に惚れてしまうところだったからだ。(デートが楽しくて我を忘れてしまいかけた。アルヴァロは、どこかあの子に似ていて困る……) 公園に来ている民たちが遠巻きにこちらを見つめる中、俺はレモネードを二つ購入し、いそいそと従者アルヴァロのもとを目指す。そのアルヴァロが問題だった。 金色の柔らかそうな髪に宝石のような翠眼を持つその従者は、あどけない少年のような顔をしている癖に、体の主張はえらく激しい。 そんなアンバランスさは【女体化の呪い】によるためだろうが、むしろそこがイイと思ってしまうなんて、俺はなんて酷い主なんだろう。まるで変態じゃないか。 一刻も早く呪いを解いてやらなければならない。 いつも傍で支えてくれて、時に従者として、時に友人のように接してくれるアルヴァロ――想い人がいるという彼のために。(アルヴァロ。お前もきっと仲良くなれると思うんだ。あの子――十年前修道院で出会ったあの少女は、お前に似て強くてかっこいいから……) そんなことを考えながら、俺はアルヴァロの待っている池のほとりに戻って来た。 しかし。「アルヴァロ! どこだ、アルヴァロ!」そこにアルヴァロの姿はなく、残されていたのはへし折られた婦人物の日傘だけ。 それは、女性の装いをしてくれた彼が差していたはずの日傘だった。

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     焼き菓子を食べ終え、恋バナも変な感じで終わった私とフェルナン陛下は、その後広場で大道芸を観賞。森林公園の池をボートで三周し、池に向かって石切勝負を十戦。 そして公園を散歩していた一般の方々から声援を受けるという、「お忍びデート」ってなんだっけ状態のデートを楽しんだ。「やった! また私の勝ちですね!」「いいや、まだだ! 俺は絶対にあきらめない!」「正義のヒーローみたく言われましても」 私は大笑いしながら、勝負とは関係なく石を水面に向かって投げた。ピョンピョンピョン……と石は十回水面を跳ね、まるで今の私の心のようだと思った。(楽しい。フェルナン陛下といると、すごく楽しくて幸せ) 極貧時代、玩具ひとつなかった私が暇潰しにやっていた石切で、フェルナン陛下とこんなにも愉快に遊ぶことができるなんて。 それだけじゃない。 仕事ではあるが、今日は二人で町を歩き、たくさん話してたくさん笑った。 私が男としてお傍にいる時だって、同じくらい一緒にいて色々と話したのだが、今日は主従の壁を越え、まるで友人のように接してくださる。(【女体化の呪い】様様だ。男のアルヴァロじゃあ、こんな贅沢な体験、できなかっただろうし) フェルナン陛下の方をちらりと見ると、彼はせっせと平たい石を探していた。 本当に負けず嫌いというかしつこいくらいだが、そこが可愛い。 一国の王が石切に必死になる姿なんて、誰も見たことがないし、想像もできないだろう。 もしこのままずっと、私が【女体化の呪い】を受けたフリを続けたら――。(ワンチャンある……⁉ いや、でも陛下はまだ女嫌いだもんね……) 女だろ

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    「アルヴァロ。先程の話だが」 装飾店を出た後、城下町の広場で焼き菓子を食べながらフェルナン陛下は徐に口を開く。(えっ。先程の話?) 私は焼き菓子の露店の前で、「マドレーヌにするかフィナンシェにするか悩ましいですね」と二人で盛り上がった話のことかと思い、手元のマドレーヌを見やる。 今更、「俺もマドレーヌが良かった、交換してくれ」と言われても困る。こちらはほとんど胃袋に収めてしまったのだ。 私が「欠片でよろしければ」と無礼承知で提案すると、フェルナン陛下は「なんの話だ」とやれやれと肩を竦めて笑った。「装飾店でお前が言っていた『遠くから想うだけで十分』という話だ」「あぁ、それですか」 私が、ぜんぜん「先程」の話じゃないじゃないですか、という言葉を胸に飲み込んだのは、フェルナン陛下が少しかしこまった口調のように感じられたからだ。 そこで私はハッとした。「えっ! もしかして、女体化した私に惚れてしまわれました⁉」「そういう話ではない。俺はお前が男だろうが女だろうが、見る目を変えはしないからな」 バッサリ。ちょっとがっかり。「しっかり萌えてるくせに……」 真っ先に衣装店に連れて行き、ミニスカートとニーハイブーツを購入したのはどこの誰だ。 しかし私の納得の有無など気にせず、陛下は構わず話を続ける。「もしかして、お前には好きな者がいるのか?」「マジで恋バナですか?!」「ふざけずに正直に答えろ。主命令だ」「私じゃなかったら、パワハラとセクハラで訴えられてますよ?」 と

  • サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。   第10話 陛下は指輪を贈りたい

     天気の良い昼下がり。 室内の公務を片付けたフェルナン陛下と私は、二人で城下町に出かけていた。 残念ながらデートではない。城下町をお忍びで視察するために、デートのような雰囲気を醸し出しているだけだ。 正体がバレないように、フェルナン陛下は護衛の騎士という設定の衣装に身を包んでいる。国民全員に素顔を知られている陛下は、髪型を七三分けに、そして眼鏡をかけるという圧倒的「陽」のイメージを半減させるスタイルだ。 しかし、まあ、どんな見た目でもフェルナン陛下はかっこいいので、眼福であることには変わりない。もちろん、網膜映写機にその御姿は刻ませていただいた。 一方、私はというと。「い……、いかがですか。私、貴族の娘っぽいでしょうか。……いや~、私男なので流行りのドレスやアクセサリーなんて分からないんですけど、ちょっと頑張って選んでみたというか……」 普段のミニスカの騎士装束や、夜会の時にもドレスは着たものの、自分でコーディネートするというのは、こっ恥ずかしくてたまらない。 入学した年から男女共学になった騎士学校でさえ、私はスカートの制服を選ばなかったのだ。男を演じていると、「自分で」女性ものを選ぶということが、軽く拷問なのである。 そんな精神状態の中で私が選んだものは、瞳の色に合わせたグリーンを基調にした爽やかなドレスに、同じ色の宝石の付いたチョーカーとイヤリング、そして上品なデザインの日傘。華美過ぎず、地味過ぎずの路線をいったつもりだ。(アルヴァロは男設定だし、あまりガチめな服だと引かれるかもしれない。でも、ダサショボい装いは、隣を歩く陛下に不快な思いをさせてしまうかもしれないし、これくらいのラインが最適解だと思うんだけど……) ドキドキしながら、チラッとフェルナン陛下の表情を伺うと――。

  • サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。   第9話 二人だけの夜会

    (とんでもない目に遭った……。ドレスは台無しだし、陛下には百合認定されるし、練習したダンスは無駄になっちゃうし……) 毛布を巻いた状態で自室に戻った私は、騎士装束に着替えていた。手持ちの装束はすべてフェルナン陛下指定の谷間くっきりボディアーマー&ミニスカ&ニーハイブーツに差し替えられてしまっているのだが、だんだんこの格好に慣れてきていることは否定できない。(あーあ……。陛下と踊りたかったなぁ……) あんなに一生懸命に練習したのにと、私はベッドに座り込んで肩を落とす。 サブリナ様を納得させるだとか、モブたちを驚かせてやろうだとか、そんな理由を付けていたが、私の心はもっと単純だったらしい。 私は、憧れの人と踊りたかった。 堂々と胸を張って、フェルナン陛下の隣で夜会を楽しみたかった。 だから苦手なダンスも練習したし、綺麗になろうと努力もしたのだ。 だがこれは、呪われたと偽っている罰かもしれない。いや、そもそも男であると装って仕えていたからか。私は神様を信じてはいないが、世の中そんなにうまくいくようにはできていないのだろう。 私がそんなふうに落ち込んでいると、ドアを優しくコンコンッとノックする音が聞こえた。「アルヴァロ。いるか?」 フェルナン陛下だ。 私は大急いで着替えを済ませ、ドアを開けた。 ドアの前に立っていたフェルナン陛下は、器用に両腕に料理やデザートの皿をいくつも乗せているではないか。まるでお城の配膳係のようで、私は面を食らってしまう。「先ほどは置きざりにしまって、すまなかった。神々しいものを見た気がして、つい……」「言っときますが、ヴィオ

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